花火。。

 今日、用事で外にでた。一昨年母が退院した時、「見舞いに来てくれた同級生にお礼が言いたい。」というので、伺った家の近くを通りかかった。
 急に母のことを思い出した。
 秋の天気のいい日だった。母は私の車の後ろに乗って、自分の生まれ育った村を、親戚、同級生と訪ねながら回った。私は、「この日をいずれ母との1ページとして思い出すのだろうな。」と思った。


2004年8月
 小さい頃から、私を可愛がってくれていたAさんという方がいた。Aさんは、I町に住んでいて、夏になると「一度、こっちの花火を見に来られ」と声をかけてくれていた。
 しかし、私は花火どころか、母と出かけた記憶はない。実家の仕事の都合で、母が出かける時は、私はいつも留守番だった。
 そのAさんが、その年の春に亡くなった。肺がんだった。私は、Aさんが亡くなったのを知らず、母が入院するちょっと前にそのことを知った。そして、お線香を手向けに行きたいと思っているうちに、母が入院になり、そのままになっていた。
 8月21日の夜、私が病院に行くと、ちょうど兄も病室に来た。母の病室は7階だった。
「あ、花火。。」
窓の向こうに、Aさんが一度見に来るように言っていたI町の花火だった。
「ほんとや、I町の花火や。Aさんが見に来いって言っとったけど、、とうとう行かんだな。。」
母が言った。
「きれいやね。」
しばらく、母と兄と私は3人で花火を見ていた。
それぞれ3人の心の中で、どんな思いがめぐっていたのか。。。

23日には検査の結果が出ることになっていた。